発達障害の「検査」は、お子さんの「外から見えない苦手」を知る手立てにもなります。発達障害の検査で何がわかるのかまとめました。専門病院以外でも受けられます。
発達障害の検査を受けるときに注意することは?
発達障害の検査を受けるときに注意することは「検査は万能ではない」ということ。お子さんのコンディションでも検査結果は変わりますし、検査の見方にも専門知識が必要です。
また発達障害の有無などの「診断」は、医療行為で医師にしかできません。 検査だけで決めつけないよう、気をつける必要があります。
発達障害の検査はどこで受けられる?
発達障害の検査は専門病院だけでなく、市区町村保健センターなど・都道府県の児童相談所など「自治体の相談機関」でも受けられます。(※場所によって受けられる検査が違います)
発達障害の検査料金はいくらかかる?
発達障害の検査料金は、 自治体なら「通常無料」です。各相談機関でご確認ください。
専門病院では「有料」(保険適用と自費の両ケースあり)。
高額ですが、民間事業者でも検査は受けられます。
発達障害の検査のときに必要なものは?
発達障害の検査をお子さんだけが受けるなら、必要なものはありません。
親御さんなど保護者の方が答える検査の場合は「母子健康手帳(母子手帳)」の持参をおすすめします。
発達障害の検査の結果はすぐわかる?
発達障害に関する検査結果は、当日わかるものから数週間~1カ月程度かかるものとあります。
発達障害の検査でわかる「見えない苦手」とは?
発達障害の検査では、検査数値と検査員さんの観察によって、お子さんが困っているのに「外からは見えない苦手」もわかります。
検査数値でわかる「得意・不得意」
検査結果を数値であらわす検査では、平均値と比較することで、お子さんの「得意なこと・不得意なこと」がわかりやすく示されます。
検査結果のグラフに表れる「発達の凸凹」
検査結果の数値を折れ線グラフであらわす検査もあります(例:WISC)。
得意・不得意を「他者の平均値」と比べるだけでなく、お子さんが「内面で抱えているギャップ(発達の凸凹)」を知る手がかりになります。
検査員の観察でわかる「子どもの特性」
教育・熟練された検査員さんであれば、お子さんの様子を観察することで、親御さんが知らなかった「お子さんの特性」に気づくこともできます。
検査で「見えない苦手」がわかったらどうすればいい?
発達障害の検査で「見えない苦手」がわかったら、よりお子さんに合った関わり方を知ることができます。親子間の無駄な衝突も減らせるかもしれません。
検査員さんからもアドバイスがもらえるはずなので、「見える苦手」も含め、「困っていることへの対処法について相談」されることをおすすめします。
検査結果に納得できない場合、再検査できる?
発達障害の検査は、再検査が受けられるようになるまで時間をあけなければなりません。期間は半年とも1年とも聞くので、受ける検査機関におたずねください。
発達障害の検査にはどんなものがあるの?
発達障害に関する検査(アセスメントツール=評価ツール)は、 厚生労働省ホームページの調査報告書(以下、報告書)に名前があるものだけで40もあります。
検査の種類が多いので、報告書の分類に基づき
「厚生労働省 平成 24 年度障害者総合福祉推進事業 報告書 発達障害児者のアセスメントツールの効果的使用と その研修について」(平成 25 年 3 月 特定非営利活動法人アスペ・エルデの会)より抜粋
- 知能検査・発達検査
- 生活能力・問題行動
- 自閉症特性
- ADHD特性・LD特性
- 運動機能
の5つそれぞれで、医療機関・相談機関で多く利用されている「主な検査」を中心に紹介します。
知能検査・発達検査
発達障害に関する検査で、まず思い浮かべるのが「知能検査・発達検査」。知的・身体的発達などを調べる心理検査です。
おもな検査に「ウェクスラー式知能検査」「田中ビネー知能検査」「K-ABC(KABC)」「新版K式発達検査」があります。
ウェクスラー式知能検査で何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
WISC(Wechsler Intelligence Scale for Children) | 5歳~16歳11カ月(児童用) | 60分~90分 | ※ | WISC-Ⅳ (ウィスク・フォー) |
WPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Inteligence) | 2歳6カ月~7歳3カ月(幼児用) | 50分~70分 (2~3歳40分) | ※ | WPPSI-Ⅲ (ウィプシ・スリー) |
WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale) | 16歳~90歳11カ月(成人用) | 60分~90分 | ※ | WAIS-Ⅳ (ウェイス・フォー) |
ウェクスラー式知能検査は、株式会社日本文化科学社が発行している知能検査。
適用年齢によりWISC、WPPSI、WAISの3種類ありますが、 管理人の周囲では「幼児期は田中ビネー、学齢期に近づくころからWISC」という印象で、厚生労働省の資料にも
知的発達の変動や個人差が大きい幼児期には、ウェクスラー式知能検査が用いられることはそれほど多くはないが、児童期や成人期においては、ウェクスラー式知能検査は心理検査として最も頻繁に使用されるもののひとつ
厚生労働省HP内「平成 30 年度障害者総合福祉推進事業『知的障害の認定基準に関する調査研究』報告書」(平成31年3月社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会)より
とあり、「児童期以降のポピュラーな心理検査」といえます。
ウェクスラー式知能検査のうちWISCでは、平均値を100とした
- 言語理解
- 知覚推理(見たものからの推測)
- ワーキングメモリー(作業のための一時的な記憶と実際の動作)
- 処理速度
の4つの指標と、全指標を合成して算出した
- 全検査IQ(知能指数)
がわかります。
田中ビネー知能検査で何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
田中ビネー知能検査 | 2歳~成人(就学前後対象「就学児版」あり) | 60分~90分 | 田研心理検査士 | 田中ビネー知能検査V(ファイブ) |
田中ビネー知能検査とは、田中教育研究所(現一般財団法人)によって改訂を重ねられてきた「ビネー式知能検査」の一つ。
児童相談所で、愛の手帳や“療育手帳の判定のために使用されることも多い知能検査”です(厚生労働省HP内「平成 30 年度障害者総合福祉推進事業「知的障害の認定基準に関する調査研究」報告書」より)。
田中ビネー知能検査では、 暦の年齢(生活年齢)と、「数の概念」「ひもとおし」などの課題(1歳級~13歳級で最大96問)から
- 精神年齢
- IQ(知能指数)
がわかります(成人級は全17問からIQのみ算出)。
K-ABC(KABC)で何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
K-ABC(Kaufman Assessment Battery for Children) | 2歳6カ月から18歳11カ月 | 約30分~120分 | KABC-Ⅱ検査者 | KABC-Ⅱ |
K-ABC(心理・教育アセスメントバッテリー。KABCとも)は、日本K-ABCアセスメント学会(http://www.k-abc.jp/)が管理する知能検査です。
K-ABCでは、
- 認知尺度(理解力や記憶力などの一般的な知的能力)
- 習得尺度(漢字を含む文字の読み書き、算数の計算など)
がわかり、 「基礎学力」にもふれている点が特徴です。
新版K式発達検査で何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
新版K式発達検査 | 乳幼児~成人 | 20分程度~1時間強 | 発行元講習会あり | 新版K式発達検2001(2020版冬発行予定) |
新版K式発達検査は、京都国際社会福祉センターが発行している発達検査です。
日常生活や遊びにも見られる反応や動作、言葉・社会性などを観察することで「発達年齢」(発達水準がどの年齢に相当するか)を調べ、
- 発達指数 (暦の年齢と発達年数が同じなら100)
がわかります 。
そのほかの知能検査・発達検査
そのほかの知能検査・発達検査には、
TOM 心の理論課題検査法、DN-CAS 認知評価システム 、KIDS 乳幼児発達スケール、遠城寺式・乳幼児分析的発達検査 、津守・稲毛式精神発達質問紙、絵画語彙発達検査、 ベンダーゲシュタルト検査、読み書きスクリーニング検査
報告書より抜粋
などがあります。
生活能力・行動検査
生活能力・行動検査とは、身辺自立や集団に参加するためのコミュニケーション力などの「生活能力」や「情緒(感情)や行動の問題」などを調べることで、支援の方法をさぐる検査です。
子ども本人が答えるものと周囲の大人が答えるものがあり、おもな生活能力・行動検査に「S-M社会生活能力検査」があります。
S-M社会生活能力検査で何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
S-M社会生活能力検査(Social Maturity Scale) | 乳幼児~中学生 | 20分 | - | S-M社会生活能力検査 第3版 |
S-M社会生活能力検査は、特別支援学校旭出学園の教育研究所が開発・改訂している検査。
お子さん本人が受ける検査ではなく、親御さんや先生など「身近な大人」が、生活に必要な行動(例:トイレ、一人での外出)を「お子さんがどの程度できるか」の質問に◯✕で答えます。
S-M社会生活能力検査では、
- 社会生活年齢(回答結果を換算表に合わせ変換)
- 社会生活指数(暦の年齢と社会生活年齢から計算。暦年齢と同じなら100)
が、わかります。
そのほかの生活能力・行動検査
そのほかの生活能力・行動検査には、
知的障害者福祉協会版アセスメントシステム、CBCL(子どもの行動チェックリスト-親用) 、TRF(子どもの行動チェックリスト-教師用)、SDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire)
報告書より抜粋
などがあります。
自閉症特性に関する検査
自閉症特性に関する検査には、おもに「PARS-TR」があります。
PARS-TRで何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
PARS-TR(Parent-interview ASD Rating Scale-Text Revision) | 3歳以上 | 30分~1時間半程度 | - | PARS-TR第2刷 |
RARS-TRとは、一般社団法人発達障害支援のための評価研究会編著・金子書房発行の“自閉症スペクトラム症の特性と支援ニーズを評価する面接ツール”(株式会社金子書房より)。
お母さんなど、検査対象者のお子さんをよく知る養育者に面接・聞き取り、
- 自閉症スペクトラム症の特性をもっている可能性
- お子さんを支援する方法
をさぐります。
そのほかの自閉症特性に関する検査
そのほかの自閉症特性に関する検査には、
M-CHAT、TTAP
報告書より抜粋
などがあります。
ADHD特性・LD特性に関する検査
ADHD特性・LD特性に関する検査とは、注意欠陥多動性障害と学習障害を対象とした検査です。おもな検査に、注意欠陥多動性障害の「ADHD-RS」があります。
ADHD-RSで何がわかるか
適用年齢 | 検査時間 | 検査員資格 | 最新版 | |
ADHD-RS(ADHD Rating Scale) | 5~18歳 | 10分 | - | ADHD RS-Ⅳ |
ADHD-RSとは、直訳すると「注意欠陥多動性障害の評価尺度」。 株式会社明石書店の出版物です。
お子さん本人ではなく、ご家族や学校の先生などが、お子さんの行動に関する18項目の質問を4段階で答えることで、ADHDの傾向を調べます。
そのほかのADHD特性・LD特性に関する検査
そのほかのADHD特性・LD特性に関する検査には、
ADHD特性:Conners3、CAADID、CAARS LD特性:LDI-R
報告書より抜粋し、適応する障害別に分類
などがあります。
運動機能に関する検査
運動機能に関する検査とは、おもに「協調運動」(手と足など別々の部位を一緒に動かす動作)について調べる検査です。
発達障害のあるお子さんによくみられる、理由が思いあたらないのに極端に不器用な「発達性協調運動障害」 (運動音痴と誤解も) の傾向もわかります。
厚生労働省の報告書ではあまり利用されていなかった検査ですが、DCDQ、M-ABCなどがあります。
→小学校入学に向けて教育委員会の就学相談でWISCとS-M社会生活能力検査
→将来に向けて専門病院を受診しWISCを受けました。